2013年3月3日日曜日

Red Rhodes - Velvet Hammer In A Cowboy Band

 死ぬまでにどうしても手に入れたいレコードというのが僕には3枚あって、そのうちの一枚を先日ひょんなキッカケでとあるレコードマスターからお借りする事が出来た。自分の欲しい...

 
 名ペダルスチール奏者Red Rhodesの73年作。世紀の超マイナーカントリーレーベル「カントリーサイドレコード」から発表された全ラインナップ2枚のうちの1枚。
 
 60年代頭よりプロとしてのキャリアをスタート。同じ時期に出てきた同業者Pete Drake同様、当初はオーソドックスなカントリーを演奏していたが、60年代後半から70年代頭にかけ、The Byrds、Carole King、The Carpentersなど主に西海岸のカントリーロック、SSWなどのセッションワークで引っ張りだことなる。面白い所だとソフトロックの金字塔The Millennium「Begin」B面2曲目で彼の演奏が聴けたりする。
 とにかくその歌い手を包み込むような演奏には当時から定評があり、歌伴奏をさせたら彼に敵無しである。
 セッションワークでの個人的にお気に入りのトラックはJames Taylor「Sweet Baby James」収録「Any Where Like Heaven」と、Bart Janschが西海岸に渡り録音した「L.A.Turnaround」収録の「Travelling Man」での演奏。「Anywhere Like Heaven」は僕自身ペダルスチールを買うキッカケになった曲のひとつだったり。

 楽器というよりむしろマシンといった方がしっくりくるスチールギターを操る人々のレコードはどれも技術屋的香りがして面白いものが多い。古くはSpeedy WestやAlvino Reyなんかは50年代後半とかなり早い段階で従来のポップスにはみられないスペーシーでエフェクティブなレコードを作っていたり、名手Pete Drakeはトーキングモジュレーターをロック界に持ち込んだ張本人だったり。スチールギターの可能性を飛躍させたDaniel LanoisはBrian Enoのアンビエント、音響作品たちを陰で支えた。最近だと高田漣さんのソロ作なんかはセッションワークからは想像もできぬほど実験的なものが多くて面白い。


 さて本盤もそんな実験精神に富んだ一枚。師の数少ないソロワークの中でも、半ば自主制作のような小さなレーベルから発売されたためひと際数が少なく、「ギガレア盤」としてマニアの間で取引されている一枚。僕のように血眼で探し求めているスチール弾きも少なくないはずである。

 テープ編集を駆使したエフェクティブなカントリーロックとはもはやポストロック世代を通り越したオルカンとでもいう方がしっくりくるようなサウンド。特にB面1曲目ベースのメロディ弾きから徐々にドラマチックに展開していく様はさながらTortoiseのようである。
 
 しかしながらこのレコードの良さは、スチールものというと実験精神に富んでいて、演奏も抜群によいものが大多数であるが、肝心の楽曲が何とも言えないものも多いなか、こちらは楽曲の質がどれも粒ぞろいであるという点。

 長く聴いてきたい一枚。

 
 にしても本当に難しい楽器である。足も指も足りない。

岡田


1 件のコメント:

  1. 私はこのアルバムも大好きです、それは素晴らしい作品です。

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